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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

さっそく杯を与えて、

「この船は、何石積みか」

と、質問した。

織田軍の船手方、九鬼家の家臣といえば、みな潮焦けのした顔に鯔のような眼を持って、歯ばかり白いさむらいばかり多い。ここに臨んで接待役に当った三名も、年配はみな四十以上らしいが、骨逞しく、贅肉なく、ひどく大きな手を、不器用に両膝へ乗せて、坐り仕事は不勝手でござると、その容子からして物語っている。これなん今、天正時代の海国武士とでもいう者どもか、風采いかにも洋々と寛く、顔にも陸棲人士のごとく焦ついた神経などなく、各※(二の字点、1-2-22)、鯱か鯨の子みたいに、頗る縹渺たる風格のなかに、また一種の楽天的な気概をそなえている。

「は。何でござるか」

ひとりが反問した。

陸上での政治的な勢力とか、そこでの権勢家とか何とかいう憚りも、彼らにはすこしも反映していない。故に、媚び諂いも知らないぶっきら棒である。――秀吉は、その三人のぶっきら棒を、愛すべきもの哉と、見まわしながら、もう一度いった。

「この船は一体、何石積みか。――これで朝鮮国ぐらいまでは、航けるかな?」

接待役の三名は笑った。ただ笑っているだけで答えをしない。