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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

……信長公が、至極、そこのところを不即不離に、包容なさるものだから、南蛮の島々、奥南蛮の大国、西欧の諸辺から、種々な物を舶載してくる。だがゼビエーは本国へ書簡をもって云っている。――この国だけには兵船を向けて来るな。文化と宣教師は送ってもとな」

冬荒れか、船はすこし揺れて来た。寒さも痛烈に夜更けを覚えさせる。秀吉は、彼らから聞くだけを聞き、語るだけを語り尽くすと、

「寝むぞ。――そちたちはなお心ゆくまで飲んでおるもよい。旅だ、楽しめ」

と云いのこして、さっとべつな船室へはいって眠ってしまった。

内海とはいえ、沖へ出ると、かなり大きな濤音が船体を横に搏つ。

快い眠りのなかへひき込まれながらも、秀吉の浪漫的な空想の血だけはなおどこかでうずいていた。

半眠りのなかのその空想がさまざまな幻像をえがく。

茶わん屋の座敷が泛ぶ――

少年の頃だ。自分の手はひびあかぎれに腫れている。

大勢の奉公人のすみに、ちょこなんと、畏まっている自分だった。手代もいる。飯炊き男もいる。下婢もいる。

主の茶わん屋捨次郎は、美しいお内儀と、息子の於福をそばにおいて、火鉢と晩酌の膳をそばに、よいごきげんでみんなに話をして聞かせている。