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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

どうしてこんな騒ぎになったかというと、信長が、除夜の晩に、

「元日の年賀客は、誰彼を問わず、ひとり百文ずつの礼銭をとれ。めでたく新春に会い、今日を無事に過ごし、信長に謁して賀を述べられる冥加として、百文ぐらいな年賀税は徴してもよろしかろう。――堀久太郎、蒲生右兵衛、ふたりして明日は奉行せい」

と、いいつけたことに起因する。

それだけでなく、信長は、

「年賀税をとる代りに、日頃人々には開かぬ城中の秘閣深殿をあけ放ちて、悉く見物させてつかわすがいい」

と、開放を免したからだった。

人気といえば、これも人気を喚び起した原因といえよう。

すでに、数日前から、安土の町々に旅舎をとって、待ちかまえていた大小名や、或いは、有資格者の町人、儒家、医師、画人、工匠、あらゆる階級のものから、大小名の家中も挙げて、

「きょうの折をのがしては」

と、いちどに山へさして来たから堪るべきわけはない。人死にまで生じるような満山の大混雑となってしまった。

だが人々はそれだけの値打もあったと後悔はしなかった。

まず総見寺毘沙門の舞台から見物し、表之門から三之門に入り、御殿主から白洲まで来て、ここで、御慶を申しあげる。