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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
06 第六分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页
つつあります」
またの飛報には、
「信玄公のお血すじたる盲人の龍宝法師も、敵の手にとらわれ、敢えなき死をおとげなされた由」
と、聞えて来た。
そのときこそ勝頼は眦をあげて罵った。
「無慈悲な織田勢。盲人の法師に何の罪やある。何の抵抗力があるかッ」
しかし彼は自分の死のほうが、より強く今は考えられてきた。じっと、空しい唇を噛んでは、心の波の底に、
「こういう憤りを外に出しては、勝頼、逆上せりと思われぬでもない。あたりの家臣どもにも不面目――」
と、自制しているふうだった。
神経が太い、粗いと、彼の剛毅な表面を全部に観ている者も多いが、実は、家臣にたいしてすら、細かい気をつかう勝頼であった。それにつれて、彼の節義とするところも、主人としての面目も反省も、総じて小乗的だった。
父の遺風をうけて、彼も快川和尚から、その禅義を授かっていたが、同じ師、同じ禅を学んでも、信玄のような禅を活かし得なかった。
「――まちがいではないか。高遠の城だけは、まだまだ半月や一月は支えきっていると信じていたが」
高遠陥落と聞いたときなど、こういう呟きすら洩らした程である。防戦上の誤算というよりは、人間としての未熟さを忌憚なく出している。