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にほんばし
日本橋
泉 鏡花
「日本橋」千章館、1914(大正3)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,697 字 · 177 页
そこが中庭になる、錦木の影の浅い濡縁で、合歓の花をほんのりと、一輪立膝の口に含んだのは、五月初の遅い日に、じだらくに使う房楊枝である。
その背後に、座敷が見えて、花は庭よりもそこに咲いて、眉の緑の年増も交る。
と、下地子らしい十二三なのが、金盥を置いて引返して来て、長火鉢の傍の腰窓をカタンと閉めたので、お孝の姿は見えなくなった。
とばかりで、三和土に立った警官は、お孝が降りて来た階子段を斜に睨んで、髯を捻る事専なり。で、少時家中が寂然する。
一体、不断は千本格子を境にして、やけな奥女中の花見ぐらい陽気な処へ、巡査と見ると騒動が豪い。謹むのではない笑うので、キャッキャックックッ、各自があっちこっち、中には奥へ駆込んで転がるまで、胡蝶と鸚鵡が笑う怪物屋敷の奇観を呈する。
事の起因を按ずるに、去年秋雨の降くらす、奥の座敷に、女ばかり総勢九人、しかも二組になって御法度の花骨牌。軒の玉水しとしとと鳴る時、格子戸がらり。
「御免。」と掛けた声が可恐く厳い蛮音。薩摩訛に、あれえ、と云うと、飛上るやら、くるくる舞うやら、ぺたんと坐って動けぬやら。
座敷では袂へ忍ばす金縁の度装の硝子を光々さした、千鳥と云う、……女学生あがりで稲葉家第一の口上言が、廂髪の阿古屋と云う覚悟をして度胸を据えて腰を据えて、もう一つ近視眼を据えて