轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
にほんばし
日本橋
泉 鏡花
「日本橋」千章館、1914(大正3)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,697 字 · 177 页
そりゃ、貴方、通常服で、そして小倉じゃが袴を着けて出向いたけえな。
どうか思うたが、取次いだ小使どんが、やや暫時あって引返して、お目に掛ろう言わるる、通れ、とあって、廊下伝い方角を教わって、そしてそれから歩行き出したがね、――私は先年この岐阜県下ですわ、飛騨のある山家辺僻に勤務した事があって、深い谷陰、高い崖に煙草の密造をする奴を検べに行ったのじゃね。その節、路も無い処を、いわゆる、木の根巌角ですわい。時々藤蔓にぶら下って、激流の空を綱渡などしたが、いや、見当の着かぬ心細い事は、――門外漢が学校のその奥へ行く廊下伝いは、奥山を歩行くどころではなかったです。
日も西山に没して、前途なお遥なりと云う、遠い向うの峠見たような処に、大な扉の戸を、細う開けて、背にして、すっくりと立って、こっちを出迎えておられた。峰の一本の松という姿に見えたのが、何と驚いたねえ、あの晩の少い紳士じゃ、国手じゃったで。
ぴたりと留まって、思わず、挙手の礼を施したですよ。常服では可笑いのじゃが。
すぐにこれへ、と言われて、大な扉を入ると、ズシンと閉ったと思われい。稲妻のように、目を射られたのは、室一杯に並んだ書架に、ぎっしりと並んだ、独逸語じゃろうね、原書の背皮の金文字ですわ。