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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

あらためて屋敷内外の大捜索が開始された。前に物置きに一郎が倒れていた例もあるので、部屋という部屋は、残らず、隅々までも探しまわり、三階の円塔の内部はいうまでもなく、母家の縁の下まで調べ、広い庭園も草を分けるようにして捜索したが、二人の姿はもちろん、足跡その他手掛りになるようなものは何も発見されなかった。

主人の寝室にも一郎の寝室にも、ゆうべ十一時ごろまでは、なんの異状もなかった。というのは、そのころまで、二人の部屋の見張り番が正気でいたからである。二人が一度はベッドに寝たことも、シーツの乱れなどから明白であった。

だが、見張りの書生は二人とも、十一時ころから朝までのことをまったく知らなかった。その少し前、女中の運んでくれた紅茶を飲んだのだが、どうやらその中に眠り薬がはいっていたらしいのである。

女中が取調べられたことは言うまでもないが、彼女は伊志田家に二年も勤めている素性のよくわかった女で、黒覆面の共犯者とは考えられなかった。眠り薬を入れたものはほかにあって、彼女は何もしらず、ただそれを運んだばかりのように察せられた。

では、眠り薬を入れたのは何者であったか。