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あんこくせい
暗黒星
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页
覆面の曲者が爆発するように笑い出したのである。はっきりした男の声で、さも快活に笑いだしたのである。
こちらの二人は、この気違いめいた出来事に、あっけにとられて立ちすくんでいると、曲者は悠然として、顔の覆面を取りはずし、マントを脱ぎ捨てた。
その下から現われたのは、若い娘であったか。それとも、凶悪無残の野獣のような男子であったか。いや、そこには一人の背広姿の瀟洒な紳士が立っていた。
「あっ、君は……」
「明智です。びっくりさせて申しわけありません」
その紳士は明智小五郎であった。北森氏とは親しい間柄の私立探偵であった。
ああ、これはどうしたというのだ。覆面の怪物の正体は明智探偵であったのか。すると、伊志田家の殺人事件の真犯人も彼なのであろうか。いや、そんなばかなことがあるはずはない。世に聞こえた名探偵の明智が、意味もない人殺しをする道理がない。しかし、それにしては、彼はなぜ覆面をしたりインバネスを着たりしていたのであろう。そして、二人を、こんな地下道などへおびきよせたのであろう。
北森氏はこの奇々怪々の出来事をどう解釈していいのか、まったく途方にくれてしまった。