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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

明智は無理に一郎を引き離すようにして、再び彼の寝室へ連れ戻った。

それから一郎に飲み物などを与えて、激情が静まるのを待って、北森捜査課長と明智と三島刑事とが、一郎青年の部屋に落ち合い、ゆうべの出来事について、ゆっくり互いの意見を交換することになった。

一郎はベッドに腰かけ、小卓を隔てて北森氏と明智とが椅子に着き、三島刑事は同僚と共にそのうしろにたたずんでいた。

先ず明智の口から、地下室発見の次第、伊志田氏と綾子さんを助け出した顛末を、かいつまんで物語ったが、一郎青年は聞くごとに顔色を変えて、悪魔の残虐を呪った。

「それにしても、なんという恐ろしい犯罪事件でしょう。僕たち一家のものが、最後の一人まで害を受けていながら、しかも犯人が何者だか少しも見当がつかないなんて」

彼は皮肉まじりに、やり場のない忿懣を漏らすのであった。

「この事件には常識がないのだ。狂人の執念なんだ。だから正面からぶつかったのでは、とてもあいつの尻尾を掴むことはできない。狂人のくせに、何から何まで考えに考え抜いて、少しの手落ちもなくやっているんだからね」

明智は一郎と北森氏の顔を交互に見ながら、彼の意見を述べはじめた。