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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

映画の通りでした。私のいつかの夢とそっくりでした」

一郎が静かな調子で、独り言のように言いながら、パッチリと左の眼をひらいた。そして、痛々しそうに頷いてみせる明智の顔をじっと見ていたが、ふと視線をそのうしろの壁に注いだ。

すると、彼はビックリしたように、二、三度烈しく瞬いたが、そのまま視線が釘づけになってしまった。力なくうるんでいた眼が、異様な輝きを放ち、みるみる大きく見ひらかれて行った。

「あれ、あれは、なんでしょう」

おびえた声で言いながら、その壁の上部を指さした。

捜査課長と探偵とは、思わずうしろを振り返った。

その壁には小型の額がかかっていた。額の中に一郎の美しい顔が笑っている、引伸ばし写真であった。

だが、おお、これはどうしたというのだ。その美しい写真の顔の右の眼から、まっ赤な液体が流れ出しているではないか。電燈の光をギラギラ反射しながら、今傷つけられたばかりのように、タラタラと頬を流れ落ちているではないか。

死物の写真が血を流すはずはない。しかし血はまさしく流れているのだ。生々しい液体が糸を引いてしたたり落ちているのだ。

「おお、血です。