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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

鞠子の部屋へ飛びこむと、部屋のまん中に、女学生服の少女が、俯伏せに倒れたまま、じっと身動きもしないでいた。

「鞠ちゃん! どうしたの?」

大声で呼んで、肩に手をかけ、引き起こそうとしたが、その手がたちまち血に染まった。よく見ると、鞠子は胸の心臓のあたりを撃たれて、まったくこときれていることがわかった。

「おい、斎藤君」

一郎は廊下に立っている書生を呼んで訊ねた。

「君はあいつを見たのか」

「いいえ、誰も見ません。廊下を見まわっていますと、突然この部屋の中でピストルの音が聞こえたのです。すぐドアをあけてはいってみましたが、鞠子さんが倒れていらっしゃるばかりで、ほかには誰もいませんでした」

書生が答えた。

「フーン、じゃあ窓から逃げたのかな」

すぐ庭に面した窓へ行って、調べてみたが、ガラス戸はちゃんと閉まっていた。その上内部から掛け金さえかけてあった。窓を除くと、その部屋には廊下にひらいているドアのほかには、まったく出入口がないのである。

「変だなあ。窓は中から閉まってるぜ。君は、その音を聞いた時、このドアの見える場所にいたのかい」

「ええ、つい一間ほど向こうを歩いていたのです。