轻松读懂日语经典作品
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あんこくせい
暗黒星
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页
一郎はそれを聞いて、なぜかハッとしたように見えた。そして、少しのあいだ返事をためらっていたが、やがて力のない声で、
「妙にお思いでしょうが、まったく記憶がないのです。むろんその時は、相手が女だなんて思いもよらなかったのですが……」
とあいまいに答えた。やっぱり相手の肉体に女を感じたのかもしれない。それをそうとは言い得ない様子である。
「すると、最初の事件には、綾子さんの嫌疑をはらす積極的な証拠はないわけだね。
あの時、僕はカーテンの蔭の曲者を発見して追いかけたが、ご隠居の部屋の前で、かき消すように姿を見失ってしまった。
僕はすぐ御老人の部屋へはいって、誰か逃げこんでこなかったかとお訊ねしたんだが、御老人は誰もこないという御返事だった。
僕はその時、御老人が犯人を知っていて、部屋へはいってきたのを、窓から庭へでも逃がしてやって、素知らぬ顔をしていらっしゃるのじゃないかと、妙な邪推をした。君だからこんなことまで話すのだが、僕は大へん礼を失することだけれど、御老人を疑いさえした。
だが、それはただ想像にすぎない。確証があるわけではない。しかしね、もし犯人がいま僕らが問題にしている人だったとしたら、御老人は孫をかばってやろうという気持になられなかったとは言えないね。