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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

「今夜もむだな見張りをするのかしら。ああ、早く合図の光が現われてくれればいいのに」

暖かい春の夜、野外に夜を明かすのもさして苦痛ではなかったが、ちゃんと昼寝がしてあるのに、何事も起こらない退屈のあまり、ともすれば眠気がきざすのであった。

だが、その夜は睡魔に襲われなくてすんだ。夜光時計のちょうど十一時、ついに円塔に光りものがしたのである。

「おやっ、あれだなっ」

眼をこらせば、闇夜にひときわ黒く聳え立った円塔の上部、三階の窓とおぼしきあたりに、チラチラと消えては光る電光があった。その点滅の仕方が確かに信号である。

あの信号は誰に向かって送られているのか。それを探り出すのが小林少年の役目なのだ。

彼は広っぱの方に向きなおって、闇の彼方をキョロキョロと探し求めた。

すると、おお、見つけたぞ。広っぱの左手の隅の一軒の家の前に、やはり懐中電燈とおぼしき光が、チカチカと点滅しているではないか。

円塔の光と、広っぱの光とは、しばらくのあいだ、相呼応して、チカチカと瞬きを送り合っていたが、やがて、パッタリとそれが消えてしまった。

小林少年は、闇の中から、じっと双方の光り物を観察していたが、両方とも「信号終り」