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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

という調子で消えてしまったので、今こそとばかり、原っぱの隅の家の方へ歩き出した。相手に見とがめられては大変なので、闇とはいえ、身をかがめ、地物を伝うようにして、ソロソロとその方へ近づいて行った。

ところが、そうして二十歩ほども歩いた時である。突然、行く手の闇の中に、ボーッと人の姿が浮き上がってきた。誰かがこちらへ歩いてくるのだ。ひょっとしたら、電光信号を取りかわしていたやつかもしれない。こいつこそ、綾子さんの背後に潜む邪悪の張本人かもしれない。

ハッと身を伏せて窺っていると、相手は小林少年には気づかなかった様子で、急ぎ足に伊志田屋敷の方へ歩いて行く。

身を伏せているつい二、三間先を通り過ぎたので、夜目ながら、その姿をおぼろに認めることができた。それはスラッと背の高い、若い男であった。背広服を着て、ソフト帽をかぶっていた。顔はよく見分けられなかったけれど、目がねはかけていないし、口ひげもなく、なんとなくノッペリした青年のように感じられた。

見ていると、その青年は、原っぱに捨ててあった毀れかかった荷造り用の木箱を拾い上げて、それを伊志田家の煉瓦塀の下に運んで行った。