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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

家にいる時は本ばかり読んでいて、悪友というようなものもなく、これまで悪い噂も立てられたことはないということであった。庄太郎の部屋の本箱を覗いてみると、主としてフランス物の翻訳文学書がギッシリ詰まっていた。いわゆる文学青年型の男らしいのである。

結局その夜は、怪青年の身元がわかったほかには、これという発見もなく、翌日あらためて捜査を開始することにして、北森課長をはじめ、一同はうやむやのうちに引き上げることになったが、事件はいよいよ奇怪な相貌を呈してきた。塔上から懐中電燈の合図をしたのは、おそらく綾子であろうが、その合図が何を意味したのか。怪青年荒川はなんの目的で邸内に忍び込んだのか、彼を撃ったのは果たして綾子であろうか、だが青年が綾子の共犯者とすれば、なぜ彼女は共犯者を無きものにしなければならなかったのか。

もし綾子が荒川を撃ったとすれば、彼女が行方をくらました理由はわかるが、しかし、若い女の身でいったいどこへ身を隠したのであろう。それよりも不思議なのは、一郎青年の行方不明であった。彼は綾子の犯行を知り、姉に同情の余り、運命を共にして家出を決行したのであろうか。