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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,073 字 · 223 页
「原田というのは」
「船岡の館主で、原田甲斐宗輔という方です、いつか話しましたわ」
六郎兵衛は頭を振って云った、「それで、またというと、いつもその男のことが話しに出るのか」
「ええ、いつも話しというと、きっと原田さまのことがでるんです、うちの殿さまは、兵部さまよりも原田さまのほうを、ずっと気にかけていらっしゃるようですわ」
「それは初めて聞くぞ」
「あら、そうだったかしら」
「あとをつづけろ」
「兵部さまは、原田はもうこっちのものだ、と仰しゃっていました」
六郎兵衛が訊き返した、「原田甲斐がこっちのものとはどういうことだ」
「うちの殿さまや兵部さまの味方だということでしょう、涌谷さまや松山さまとは、不仲になって往き来もしないし、これまでの奥さまは松山から来た方だったけれど、その方を離別して、こんど津田玄蕃という人の妹をおもらいなすったんですって」
「松山というのは茂庭周防のことだな」と六郎兵衛が訊いた。
ええそうです、とおみやが頷いた。そしてまた、兵部さまのすすめを容れて、原田さまは出府するとすぐ御家老になられた。これだけ条件がそろえば、こっちのものとみてもいいだろう、と兵部さまは仰しゃっていましたわ。