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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,073 字 · 223 页
それは同じ大町にあり、甲斐の屋敷から北へ、奥山、古内、茂庭と続く、ほんのひと跨ぎの近さにあった。茂庭家から、留守の者がすぐ知らせに来た。甲斐は「気鬱が亢じているから注意をするように」と云い、なお、できるだけ早く松山へ知らせて、迎えの者をよこすようにたのめ、と云った。
二十五日に、伊達安芸が涌谷の館から出て来た、という知らせがあり、国目付接待のため、重臣の会合が行われた。
甲斐は欠席した。
二十六日に先触れの使者があり、二十七日に到着ということがわかった。そしてその当日には在国の一門、家老以下、町奉行までが、麻上下で城下の南、河原町まで迎えに出た。――出迎えには甲斐もいったが、時刻を計って、国目付の着く直前に、他の人たちといっしょになるようにした。
到着は午後二時であった。今年の国目付は、幕府使番の荒木十左衛門と桑山伊兵衛で、まず伊達安芸、伊達式部らの一門、一家が挨拶をし、次に国老の奥山大学、大条兵庫、古内主膳。続いて宿老の原田甲斐、遠藤又七郎。それから接待役、奉行らの挨拶が済むと、国目付は接待役の案内で、そこからすぐに宿所へ向かった。
甲斐は他の人々より先にその場を去った。