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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,073 字 · 223 页
又五郎は「待て」と呼び止め、二人の木剣を持っていって渡した。
「では今夜、西福寺で――」と内蔵助が云った。
二人を送りだしてから、又五郎は新八の部屋を覗き、声をかけておいて、奥へいった。
六郎兵衛は酒を飲んでいた。六郎兵衛の左右に二人の女がい、他の一人が行燈に火をいれていた。
又五郎がはいってゆくと、六郎兵衛は「出ていったか」と訊いた。又五郎は頷いて、そこへ坐りながら、話したいことがある、といった。六郎兵衛は彼に盃をさし出した。
「私は飲みません」
「今日はつきあってくれ」
「私が飲まないことは知っておいででしょう」と又五郎はいった、「それより二人だけで話したいのですが」
「話す必要があるのか」
又五郎は黙った。
六郎兵衛は彼を見て、女たちに手を振った。女たちが出てゆくと、六郎兵衛は簡単にたのむといった。又五郎は藤沢内蔵助らのことを話した。今夜かれらが西福寺に集まること、その結果は、おそらく五人とも道場から去るだろうこと、などを話した。
野中はさそわれなかったのか、と六郎兵衛が訊いた。さそわれました、と又五郎はいった。藤沢は私を信ずるといって、みんなで集まろうとさそったのです。