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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「そんなことがあるもんですか」

「いゝえ、いつか吉川さんとのお話し中に、それはマダム丸尾の方が若い丈けにと仰有いました」

「…………」

「清がチャンと注進しています」

「それは吉川君が言ったんです」

と安達君は差当り取り繕う外仕方がなかった。同時に清の見張り番が自分の上にも及んでいるのに気がついた。

「宜うございますよ、もう」

「奥さん、僕、困ります」

「丸尾さんへ伺うのが御迷惑なら思い止まりますから」

と大谷夫人は手がつけられない。

安達君は二階へ逃げて考え込んだ。美人競争というものは実に深刻なものだと思った。日頃朗か一方の奥さんだ。それが発作的に狂乱のようになる。成程、マダム丸尾の方が若い丈けに目を惹くと言った。それは丸尾家が吉川君の借家へ越して来てから間もないことだったように覚えている。して見ると、奥さんは以来二三年含んでいたのである。丸尾夫人を褒めたには相違ないけれど、その直ぐ後から、しかしこゝの奥さんの方が柄が大きいから品位があると言った。僕は奥さんにあの通りの妹があれば年が二つ三つ上でも宜いから貰うと冗談を言った。清はそれを聞かないで、初めの方丈け注進したのだ。