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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

それから後は独り舞台でした」

「一杯食わされました」

「それで余りお気の毒に思いましたから、公平を期した次第です。これで今日は皆五分々々になります」

「有難うございました」

「お気をおつけにならないと田代六さんのような目に会わされますよ」

「田代さんと仰有ると?」

「例の毛生え薬を貰ってつけた先生です。田代六三郎と申します。田代六さん、一升徳利提げて。何故か徳利、丈が高い」

「和歌でございますか?」

「田代六さんは太っていますが、小男です。これは私の名吟ですよ。六さんの丈が低いと言わずに、一升徳利の方が高く見えると利かしたのです。対照の妙を極めていましょう?」

「はあ」

「勘定して見ると、和歌にはなっていませんが、三味線に乗りますから当時仲間の間に流行りました」

「名作です」

「田代六さん、一升徳利提げて。何故か徳利、丈が高い」

と閣下は大分酔っていた。

食事が済むと直ぐに、奥さんが、

「佳子や、安達さんを洋間の方へ御案内申上げて、お話を伺ったら何うですか? 私はこゝで奥さまのお相手を致しますから」

と当事者二人を解放してくれた。安達君は佳子さんに従って、応接間へ戻った。