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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「安達さんにはいつか三越でお目にかゝったまゝでございますわね」

「はあ」

「あら、もう一遍ございますわ」

「今朝です」

「いゝえ」

「それじゃいつですか?」

「四五日前の夕方よ。あなたはお気づきになりませんでしたけれど、電車が二つ続いて、私は後のに乗っていましたの。あなたの方が一足お先でした」

「はゝあ」

「私が後からついて行くのを御存知なしに、あなたは家の門のところで立ち止まって、一寸お覗きになりましたわ」

「ハッハヽヽ。悉皆見届けられてしまいました」

「と」

「はあ」

「嘘よ、皆」

「やあ」

「オホヽヽヽ」

と佳子さんは先ず荒ごなしだった。

「仕方ありません。今日は何うせ出し抜かれる運命です」

「私もお蔭さまで悉皆草臥れてしまいましたわ。昼前が吉川さんでしょう。これは簡単に征伐して上げましたけれど、瀬戸さんはナカ/\頭の好い人ですから骨が折れました」

「矢張り御征伐ですか?」

「はあ」

「それじゃ僕も覚悟しなければなりません」

「私、何ういうものか、困らせて上げるのが面白いんです。敵討ちよ、矢っ張り」

「何の敵討ちですか?」

「もう二三年恨みが積っていますわ。弼に諢いながら、種々のことを仰有って私を困らせたんですから」