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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「おい。親方」

「何でございますか?」

「近所へ新店が出来たのを神経に病んでいるんじゃないかい?」

「先ずその辺かも知れません。何分宜しく」

と親方が本音を吹いたので、大笑いになった。

「何軒出来たって恐れることはない」

「へい」

「先方が余計勉強すれば、此方が負ける丈けの話だ」

「それじゃ困りますよ。先方は新店だから勉強を看板にするに定っています。此方は老舗だから、今更勉強なんかしたくありません」

「横着だね」

「勉強で勝つのは当り前でしょう」

「怠けていても負けない法を考えているのかい?」

「へい。頭を悩ましています」

「一つ相談に乗って、策を授けてやろうか?」

「何分宜しく」

「マネキンを置いちゃ何うだね? 素晴らしいのを。来るぜ」

「来たって、高くついたんじゃ勉強になります」

「いや、数さえ来れば引き合う。引き合いさえすれば、勉強にならないから、別に気の咎めることはあるまい」

「へい。しかしマネキンは高いでしょう?」

「五円ぐらいからある」

「いけません。五円頭を刎ねられるんじゃ気が咎めます。大勉強ですよ。商売が上ったりです」

「分らない男だな。その代り客が押しかけて来る。僕にしても、二度のところを三度も四度も来る」