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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「毎日五円取られるんですから、余っ程来て下さらなければ立ち行きません」

「カフェーへ行く代りだ。一晩置きに、来てやる」

「そんなに頭の毛があるお積りですか?」

「おい。打ん撲るぜ」

と客人も親方に劣らない達者ものだから、二人の遣り取りが面白かった。安達君は傾聴の役に廻った。元来親方の敵手でない。その中にお客さんが押しかけ始めた。日曜の朝を利用するのは大抵サラリーマンだ。それも親方が宣伝する通り、相応のところが多い。安達君は、兎に角もうこの連中の仲間入りをしたのだと思ったら、肩身が広かった。

家へ帰ると間もなく、大谷夫人が二階へ上って来て、

「安達さん、斯ういうお方がお見えになりました」

と名刺を取次いだ。村上君だった。

「友人です」

と安達君は立とうとした。

「先刻よ。もうお帰りになりましたの」

「はゝあ。失敬しちゃったな、これは」

「御散髪ってこと分っていましたが、初めてお見えになった方ですから、お留守と申上げてしまいました」

「嘘じゃないから宜いです。又来ましょう」

「保険会社の方ね」

「はあ」

「勧誘にお出になったんじゃありません?」

「それもあるんです」

「保険なら◎◎へお入り下さい。