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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「はゝあ」

「医者は単に夜間褥を浸す病気ですと言った。俺もそれで想像がついたから、君も常識で判断してくれ給え」

「…………」

「分ったかね?」

「夜間褥を浸す病気」

「赤ん坊のようなものだ」

「はゝあ。分りました」

「それじゃ困るだろう? お嫁さんに貰うんだから」

「…………」

「敢えて辞さないと言うかね?」

「本当でしょうか?」

「嘘を言うものか、橋本家のかゝりつけの医者で、年来その治療に肝胆を砕いているんだから」

「直らないものでしょうか?」

「そこまでは聞かなかったが、持病だろうと思う」

「僕、一つその医者と相談して見たいんです」

「それは俺が困る。俺が責めたものだから、内証で打ち明けたんだ。医者には病気の種類によって、職業上の秘密がある」

「…………」

「俺を信じてくれなければ困るな」

「無論、僕は閣下を師父と仰いでいますけれど、然ういう病気は直ると思っていますから」

「直る直らないの問題でなくて、俺は有坂、いや、その医者から聞いたところをそのまゝ君に伝えるのが責任だと感じたまでだ」

「はあ」

「知らなければ兎に角、耳に入った以上は仲人として、注意して置く必要がある。知っていながら、そんなお嬢さんを何故世話したかと君のお祖父さんなりお父さんなりから詰問された場合、返答が出来ない」