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きゅうこんさんじゅうし
求婚三銃士
佐々木 邦
「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页
橋本さんの奥さんにも道理を伺って見ましょう」
「それ丈けはお控え下さい。僕の立場が悪くなるばかりですから」
と安達君は慌てた。大谷夫人が丸尾夫人と争うのは構わない。掴み合っても心委せだが、佳子さんのお母さんの気持を悪くするようなことがあると万事休す。
丸尾夫人と大谷夫人は時折橋本家で顔が合う。大谷夫人は丸尾夫人が始終入り浸っているように考えるけれど、必ずしも然うでない。自分が行っているところへ丸尾夫人が来ることもある。しかしそれは勘定に入れない。その反対の場合丈けが印象に残る。面と向えば、お互に礼譲の限りを尽すけれど、胸の中は反感に燃えている。今までも鄭重を極めた婉曲な皮肉の遣り取りが幾度もあった。今度は歯に衣着せず言ってやる決心の大谷夫人は機会を待つこと数日にして、丸尾夫人の履物を橋本さんの玄関先に見つけた。丸尾夫人も未だ来たばかりと見えて、橋本夫人と挨拶を終ったところだった。夜前近所に火事があって一寸騒いだから、それが差当りの話題になった。
「主人が出張中でございますから、私、何うなることかと思って、本当にハラ/\致しました」
と丸尾夫人は何につけても御主人が官海に活躍していることを吹聴する。