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いきにんぎょう

活人形

泉 鏡花

「探偵小説第十一集 活人形」春陽堂、1893(明治26)年5月3日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,111 字 · 82 页

青空文庫

障子の桟も見えずなり、天井は墨のごとく四隅は暗く物凄く、人の顔のみようよう仄めき、逢魔が時とぞなりにける。亭主はいよいよ心臆し、団扇にてはたはたと、腰の辺を煽ぎ立て、景気を附けて語りけるは、「ちょうどこの時分用事あって、雪の下を通りかかり、かねて評判が高いので、怯気々々もので歩いて行くと、甲走った婦人の悲鳴が、青照山の谺に響いて……きい――きいっ。「ああ、嫌否な声だ。「は――我ながら何ともいえぬ異変な声でございます。と泰助と顔を見合せ、亭主は膝下までひたと摺寄り、「ええそれが私は襟許から、氷を浴びたような気が致して、釘附にされたように立止って見ました。有様は腰ががくついて歩行けませなんだので。すると貴客、赤城の高楼の北の方の小さな窓から、ぬうと出たのは婦人の顔、色真蒼で頬面は消えて無いというほど瘠っこけて、髪の毛がこれからこれへ(ト仕方をして)こういう風、ぱっちり開いた眼が、ぴかりしたかと思うと、魂消った声で、助けて――助けて――と叫びました。」

語るを聞いて泰助は心の中に思うよう、いかさま得三に苛責されて、下枝かあるいは妹か、さることもあらむかし。