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いきにんぎょう

活人形

泉 鏡花

「探偵小説第十一集 活人形」春陽堂、1893(明治26)年5月3日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,111 字 · 82 页

青空文庫

人品が好くって、痩っこけて、心配のありそうな、身分のある人が落魄たらしい、こういう顔色の男には、得て奇妙な履歴があるものです。と謂いつつ、手にせる写真を打返して、頻りに視めていたりけり。先刻より死骸の胸に手を載せて、一心に容体を伺いいたる医師は、この時人々を見返かえりて、「どうやら幽に脈が通う様です。こっちの者になるかも知れません。静にしておかなければ不可せんから、貴下方は他室へお引取下さい。警部は巡査を引連れて、静にこの室を立去りぬ。

泰助は一人残りて、死人の呼吸を吹返さんとする間際には、秘密を唸り出す事もやあらんと待構うれば、医師の見込みは過たず、ややありて死骸は少しずつの呼吸を始め、やがて幽に眼を開き、糸よりもなお声細く、「ああ、これが現世の見納かなあ。得たりと医師は膝立直して、水薬を猪口に移し、「さあこれをお飲みなさい。と病人の口の端に持行けば、面を背けて飲まんとせず。手をもて力無げに振払い、「汝、毒薬だな。と眼をりぬ。これを聞きたる泰助は、(来たな)と腹に思うなるべし。

医師は声を和げて、「毒じゃない、私は医師です。早くお飲みなさい。という顔をまず屹と視て、やがて四辺を見廻しつ、泰助に眼を注ぎて、「あれは誰方。