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いきにんぎょう

活人形

泉 鏡花

「探偵小説第十一集 活人形」春陽堂、1893(明治26)年5月3日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,111 字 · 82 页

青空文庫

さまでに時刻後れては、枕に就くと鶏うたわむ、一刻の価値千金と、ひたすら式を急ぐになん。さはとて下枝を引起して、足あらばこそ歩みも出め、こうして置くにしくことあらじ。人に物を思わせたる報酬はかくぞと詈りて、下枝が細き小腕を後手に捻じ上げて、縛めんとなしければ、下枝は糸よりなお細く、眼を見開きて恨しげに、「もう大抵に酷うしたが好うござんしょう。坐っている事も出来ぬように弱り果てた私の身体、どこへも参りは致しませぬ。といえば得三冷笑い、「その手はくわぬわ。また出て失しょうと思いやあがって、へん、そう旨くはゆかないてや、ちっとの間の辛抱だ。後刻に来て一所に寝てやる。ふむ、痛いか様を見ろ。と下枝の手を見て、「おや、右の小指をどうかしたな、こいつは一節切ってあらあ。やい、どこへ行って指切断をして来たんだ。と問いかかるを高田は押止め、「まあまあ、そんな事ア何時でも可いて。早く我の方を、「はて、せわしない今行きます。と出血休まざる小指の血にて、我掌の汚れたるにぞ、かっぷと唾を吐き懸けて、下枝の袖にて押拭い、高田と連立ち急がわしく、人形室に赴きぬ。後より八蔵入来り、こうこういう次第にて、八橋楼の亭主を捕え、一室に押込め置きたるが、というに得三頷きて、その働を誉めそやし、後にて計らうべき事あり。