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いきにんぎょう
活人形
泉 鏡花
「探偵小説第十一集 活人形」春陽堂、1893(明治26)年5月3日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,111 字 · 82 页
知れるなり。
四辺静になりしかば、潜かに頭を擡ぐる処を、老婆お録に見咎められぬ。声立てさせじと飛蒐りて、お録の咽喉を絞め上げ絞め上げ、老婆が呼吸も絶々に手を合して拝むを見澄まし、さらば生命を許さむあいだ、お藤を閉込め置く処へ、案内せよ、と前に立たせ、例の人形室に赴きて、その仕懸の巧みなるに舌を巻きて驚歎せり。かくてかの密室より、お藤を助け出しつつ、かたのごとく老婆を縛りてまた雑具部屋へ引取りしを、知る者絶えて無りけり。それより泰助は庭の空井戸の中にお藤を忍ばせ、再び雑具部屋へ引返して旧のごとく死を粧い、身動きもせでいたりしかば、二三度八蔵が見廻りしも全く死したる者と信じて、かくとは思い懸けざりき。
とこうするうち、高田は殺され悪僕二人は酒を飲みに出行きたれば、時分は好しと泰助は忍びやかに身支度するうち、二階には下枝の悲鳴頻なり。驚破やと起って行き見れば、この時しも得三が犠牲を手玉に取りて、活み殺しみなぶりおれる処なりし。
ここにおいて泰助も、と胸を吐きて途方に暮れぬ。他の事ならず。得三は刀を手にし、短銃を腰にしたり。我泰助は寸鉄も帯びず。相対して戦わば利無きこと必定なり。