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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

それによると、今夜「深夜の市長」から、午後八時ころ、彼の穴居の近くへ電話で知らせがあった。――今帰途についたから、八時半までにはそっちへ帰れるだろう――と。実はその夜、或る人物が「深夜の市長」を訪ねてきて急に会いたいといった。それで彼を探しているところへこの電話が来たので、それでは間もなく帰ってくることと待っていた。しかるに、もう三十分すれば帰るといった「深夜の市長」が八時半は愚か十時になっても十時半になっても帰って来ないのである。彼は嘗て時間や約束を無断で破ったことがなかった。ことに彼を訪ねてきたその人物が待っているのを知っている筈だから、それがこんなに遅いというのは途中に於て何か間違いがあったに相違ないと一同が騒ぎだしたというのである。

「二時間ぐらいしか余計に経っていないのじゃないですか……何です。仰々しく騒ぐなんて……」

すると声の下に、憤激したお照が、また河獺のように僕に飛びついてきた。速水はそれを押えるのにまた骨を折らねばならなかった。その後ですこし厳かな面を僕の方に向け、

「貴方にとっては『深夜の市長』は何でもないでしょうが、しかし『深夜の市長』