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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

「ははア、午後八時十分前目黒駅前ですか。すると遅くも八時半までには帰って来られる筈だ。さあそれが分れば一同に知らせた上、その道筋を調べにゆきましょう。貴方もぜひ一緒に行って下さい」

もちろん僕は同意した。

時刻はもう十二時に間がなかった。お照も一緒に行くといったが、速水は捜索に邪魔になるからと留め、その代り一同にこの話を伝えるようにと命じた。彼女は速水の言葉の前には傍の見る眼も可笑しいほどの温和しさをもって聞き入れるのだった。それから僕の方をキッと睨んで、

「浅間さん、隠し立てをしたり、その筋へ密告したりすると、そのときはこのあたしが只じゃ置かないからネ」

といった。これが今朝、出勤のとき、子供のような無邪気な恰好でもって僕を送りだしてくれたお照と同じ人だろうかと訝った。しかしそれも「深夜の市長」の失踪からこんなに態度が変ったのだと思えば、そんなにまで彼女に慕われている彼の「市長」に淡い嫉妬を感じないではいられなかった。

僕は速水輪太郎と一緒に、シーンとした屋外に飛びだした。そして通りで、空の円タクを停めて、目黒へ走らせた。輪太郎は要心深くも、まずその車を、一旦「深夜の市長」