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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

でも……でも、本当はマスミは駄目だわ。恵まれていないのよオ。あたしだけが熱望していたって、相手の方が氷のように冷やかなんじゃ仕方がないわ。こういっちゃなんだけれど、貴方は成程紳士らしくて、そりゃ立派よ。それは分ってるわ。しかし真の紳士というものは、百パーセントは間違いなしの生活をしていたんじゃ駄目なの。百パーセントは間違いなしの生活をした上、同時に別の百パーセントは間違いばかりの生活が出来るような能力を備えていなければいけないんだわ。ここのところ鳥渡六ヶ敷いんだけれど、貴方に分んなさる?」

「……さあ、百パーセント白で、百パーセント黒の生活をしろ、合計二百パーセントの生活をしろと云ってるんだろうが、よく嚥みこめないね」

「ああ、それだけ分っている癖に、貴方は分らないと仰有るの。あたし、どうしたらいいだろう。救われそうでいて……さっぱり救われないわ」

「君はいま、心底から力強く保護をしてくれる者が必要なんだ。よろしい、僕はきっと君の兄さんを訪ねて君の必要とするものを与えるように頼んでやる」

「アラ、まだそんなことを云って……。いいわ、あたし斯うなれば修道院に入りたい!」