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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
僕は仮りに立てた大胆な仮説が、この二つの事実からして当らずとも遠からずという程度なのを知って胸をときめかした。この上は時間の廻ってくるのを待つばかりだ。……
僕は丸の内十三号館を辞して、そこに待たせてあった円タクに乗った。変り者の絹坊は座席を滑り落ちて、靴の載るところにあいかわらず石亀のように小さくなって伏臥していた。僕は頼みに思う速水輪太郎にも会えなかったので、とうとう心を定めて、絹坊を役所へ伴っていった。そして彼女を地下室にある留置場に抛りこんだ。留置場は白昼であっても陽の目が見えなかった。こうして彼女を陽の光から隠すことが、彼女に安全感を与えるだろうと思ったからだった。果して彼女はあたりを見廻しながらイソイソと這入りこんだ。太陽に反いた児! 絹坊はなぜそんなに陽の光を嫌うようになったのだろうか。この子供はいつも母親に連れられて夜毎夜毎を遅くまで酒場などに暮していた。自然睡りにつくのもかなり遅くなり、結局太陽が顔を出している間は、酔いの勢いで前後の正体もない母親とともに寝床の中で抱き合って睡っているか、さもなくば雨戸を深く閉ざした真暗な家の中で、ただ独りままごとなどをして遊んでいるのだろう。