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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

そんなことがこの子を太陽の光から背かせることになり、随って陽の光を受けた街上で元気に遊んでいる世の子供たちに馴染まなくなってしまったのだろう。太陽の嫌いな絹坊! そういえば母親のお照が、この子供を縁の下に入れて置いたからといって、絹坊の場合それは虐待を意味するわけではなく、むしろ母親として我が子に対する情け厚い心遣いがそうさせたのだろう。

僕は絹坊を伴って灯の入ったばかりの銀座裏へ歩いていった。彼女の足どりはだんだんと活発になり、果てはなんだか口の中で歌っているようであった。

「絹坊、お前は唱歌が上手だネ」

と、僕は手をとっている女の子を顧みていった。

「……唱歌じゃないわよ」と突然無口かと思った子供が物をいった。「これ、淡海節ヨ」

「ええッ。――」僕は彼女が物を云ったことにも、その鮮やかな答にも、両方に度肝を奪われた形だった。「淡海節って、そりゃどんな唄だい。おじさんに唄って聞かせろよ」

「ああ、唄ってやろうか。……」そういって絹坊はませた声で唄いだした。「この子を生んだあたしはいいがア、この子を生ませたアあなたには、貸しがある、ヨイショコショ、忘れしゃんすなア……」