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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

その人殺しをした奴は……『深夜の市長』なのさ!」

「ええッ。……」遉の僕も、これには一驚した。

「愕いたでしょう。そして『深夜の市長』が、大悪魔だったことが分ったでしょう。この千代子さんは……」

「話の途中だが、その殺された兄さんというのは、何という名前の人かネ」

「それは四ツ木……鶴吉ていうのよ」

「呀ッ、四ツ木鶴吉! ほんとかい、それは……」

四ツ木鶴吉といえば、モガ崩れのマスミの兄の名であった。市議の旗頭動坂三郎のところで働いているという人物だった。それでは夕刊売りの千代子は、マスミの妹なのだろう。道理で、何処かで見覚えのある顔立ちだと思っていた。とにかくその四ツ木鶴吉のところへは、近いうちに会いにゆくつもりだった。そしてマスミの心境を説明して、性格破産の妹を救ってやるよう薦めるつもりだったのである。その四ツ木鶴吉が死んだと聞いて僕はすくなからずガッカリしたが、それよりも更に愕いたことは、人もあろうに「深夜の市長」が彼を殺害したという意外な話だった。

「おじさんは、兄のことを御存知ですの」

と、夕刊売りの千代子は泪にうるんだ眼を大きく開いて僕を見詰めた。