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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
僕はハッとその場に立ち竦んだ。
「……死んでいるのか」
「なアに、よく睡っているだけだ。先刻床下から注射した毒瓦斯はそれを嗅いだ人間を正味二時間に亘って、生きた屍にする。あの注射器もこの毒瓦斯も、僕が作ったものだ」
床下から麻痺性毒瓦斯を注射する――とは、考えたものだと感歎し、かつ底知れぬ街の科学者の知能に恐怖を感じた。
僕の顔色を早くも見てとったか、このとき速水は僕の前に直立していった。
「君、誤解しちゃいけないよ。僕はいつも正義の味方なんだからネ……もともと私は、人間の活動を束縛するような科学器械を作ることを好む者ではない。しかしこれを一足お先に自分の手で発明して置かなければ、他人が発明を完成して、こっちを束縛しに懸る。こいつはたまらんという外ない。神こそ、最優秀な武器を持たねばならないのだ。――さあ、急いで協力してくれ給え」
速水はドンドンと先に立って廊下を進んでいった。各室に送った毒瓦斯は、正二時間に亘って一家を全滅させているのだった。速水は毫もその毒瓦斯の効力を疑わなかった。
「ここが、動坂三郎の寝室だ。T市の黄金の鍵は、必ず彼の身辺に持っている筈だと『深夜の市長』