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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

僕は、例の問題は正午過ぎに上程のことと思い、正午までに行けばいいのだと思って、悠っくりしていたのだった。僕は愕いて、牛乳をガブガブと飲み、トーストを口に銜えて、洗面所へ駆けつけた。鏡に写った僕の顔は、一夜のうちに頬がゲッソリ痩け、寝不足の眼は真赤に充血していた。

「じゃ行ってくるよ。……まあ、帰って来てから、ゆっくり君のロマンスを聴かせて貰おう」

僕は黄金の鍵をポケットの中に握りしめて、いつものように螺旋階段を下ろうとすると、お照は慌ててそれを停めた。

「こっちから出るのよオ」

お照は明るい窓に手をかけてガラガラと明けた。外には青い空が見えるかと思いの外明るさは硝子戸と一緒に上に上って、そこにはポッカリと真暗な穴が明いた。変なことがあればあるものと、よくよく見ると、何のことだ、擦り硝子の窓は抽斗のようになっていて硝子の外側に昼色電灯が点いているのだった。窓を明けると昼色電灯も一緒にガラガラと上に上ったのであった。外は暗い地下道だった。しかしよく見ると、ずっと向うの方まで、燭力の弱い電灯が続いていた。それもその筈、今は昼間だから、この速水の高塔は、エレヴェーター仕掛で地下に下っていたのだった。