轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

ときどき円タクのヘッドライトがピカリと向うの辻に閃くばかりで、こっちの方まではやってこない。この広い大道を濶歩してゆくのは、ただ自分ひとりだった。なんという勿体ない通り路であろうか。なんという豪快な散歩であろうか。踉めいて歩こうが、眼をつぶって歩こうが、それとも後向きに歩こうが、誰も何ともいうものがなく、号笛を鳴らして神経をやたらに刺戟するものもいないのである。これが昼間、足の踏み入れようもないほど、喧騒を極めたあの柳島の通りであろうか。交通標示器をちょっと見誤ればたちまち自動車の車輪をわが血でもって染めなければならないあの昼間のT市と同じ市街なのであろうか。否々、これは全く別の座標の上に立っている別の市街なのだ。

僕は深夜の散歩を好むのあまり、饒舌を弄しすぎたようである。だが、その夜更けて、始めて会う機会をもった「深夜の市長」のいうところに比べると、僕の喋っていることなんか、赤ン坊の寝言に等しいのだ。「深夜の市長」こそは、僕の云わんとするところをハッキリ云い、そして僕が平生求めようとして求め得なかったものを無造作に持っているという正に驚嘆すべき畸人だった。