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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

手ばかりで胴体はなかった。それが何かのはずみで、泥から生えた恰好になっていたのだ。

少年達は舟に戻った。青白い女の片腕は舟の胴の間に放り出された。鋭利な刃物で切断したのか、切口は見事である。桃色の肉にまかれて、白い骨が、ちょっぴりと覗いている。一本の指にキラキラ光るのは、細い細工の白金の指環である。ムッチリした指に深く食入っている。

それからの騒ぎは細叙するまでもない。子供達の知らせに、貸舟屋の小父さんが驚いて交番にかけつけた。所轄警察署から数名の係官が出張し、人を傭って水中を隈なく捜索させたが、右の一本の腕(左腕であった)の外には、何物も発見されなかった。

それの沈んでいた場所で投込まれたものか、ずっと上流に投棄てられたのが、流れ流れて、水門を越して、滝壺に留っていたのか、諸説まちまちであったが、大滝附近に人殺しなど行われた様子のない所を見ると、恐らく後説が当っているであろうと、一巡査が貸舟屋の親父に語った。

生腕は所轄警察を経て、鑑定の為に警視庁へ廻された。翌日の新聞がこの記事で賑ったことは申すまでもない。行倒れや乞食の腕ではないのだ、艶かしい女の腕、しかも、指先に手入れの行届いていること、白金の指環などが、豊かな育ちの、若く美しい女を想像させるのだ。