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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

「ハア、品川四郎か或はもう一人の男かです。併し、こんな悪事を働く奴は、無論そのもう一人の男だと思われます」

波越氏はうやうやしく云った。相手は閣下である。月に何度と数える程しか直接口を利いたことのない、えらい人だ。

「ウ※、例の有名な幽霊男とか云う奴だね」

「そうです。あれ以来まるで消えてしまった様な怪物です」

「して、君はこのもう一人の男も見覚えているということだが」

「ハア、私ばかりじゃありません。高等係のものは誰でも知っています。有名な危険人物です」

「共産党員かね」〔後註、当時は共産党は合法政党ではなかった〕

「それが、党員とハッキリ分らない丈けに、始末が悪いのです。非常にはしっこい奴で、どうしても尻尾を出さないのです。表面では、K無産党に籍を置いて居ります」

「ハハハハ、幽霊男と共産党の握手か。イヤハヤ、奴等もすばらしい武器を手に入れたものだ。ハハハハ」

総監の豪傑笑いを打消す様に、警部はニッコリともせず答える。

「イヤ、実際恐ろしい武器です。私、長年この職に従って居りますが、こんな馬鹿馬鹿しい事件は想像したこともありません。考えれば考える程、頭が混乱するばかりです」