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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

ごらんなさい。あの通り元気ですよ」

宮崎氏はドアの方へ歩いて行って、それを開けた。明智もあとに続く。

「オヤ、オヤ、不作法なお嬢さんだぞ」

宮崎氏が笑い顔で云った。雪江は籐のアームチェーアに寄りかかって、グッタリ眠っている。

「明智さん。可哀想に余程疲れたと見えて、居眠りをしています」

「居眠りですって。あなたは、あれを居眠りだとおっしゃるのですか」

明智が驚いて聞返した。

「居眠りでなくって、外に……」

だが、云っている内に、宮崎氏にも娘の変な様子が分って来た。彼は真青になってツカツカと部屋の中へ這入って行った。

「オイ、雪江、雪江、しっかりしなさい。お父さんだ」

肩を揺っても、グニャグニャと前後に動くばかりで、何の手答えもない。

明智もアームチェーアの側に立って、雪江の様子を眺めていたが、突然常右衛門氏の腕を掴んで、囁き声で云った。

「静かに。何か聞えます。ホラ、あの音は何でしょう」

耳をすますと、ポタ、ポタ、ポタと、雨漏りの様な変な音が断続して聞えて来る。

部屋中を見廻したが、どこにも水の垂れている様子はない。しかも、物音は、つい鼻の先でしているのだ。