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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

君はよく実際の出来事はつまらないと云っているが、こいつばかりは君も驚くに相違ない。事実は小説よりも奇なりって云う、僕の持論を裏書きする様な事件だよ」

「活動写真の筋がかね」

「マア、見れば分るよ。ところで、その絵を見る前に、君の記憶を確めて置き度いのだが、今年の八月二十三日に君は東京にいた筈だね」品川は次々と奇妙なことを云い出すのである。

「八月と、八月は二十日まで弁天島にいた。弁天島を引上げると同時に東京へ来た。そして確か十日ばかりいた筈だから、二十三日は、無論東京にいた訳だよ」

愛之助は相手の意味は分らぬけれど、兎も角も答えた。

「しかも、丁度二十三日に僕と逢っているのだよ。日記帳をくって見て、それが分った。僕達はあの日帝国ホテルのグリルで飯を食った。君が僕をあすこの演芸場へ引ぱって行ったのだ」

「そうそう。そんなことがあったっけ。セロの演奏を聴いたのだろう」

「そうだ。僕はなお念の為、あれが二十三日だったということを、ホテルに聞合わせて確かめたから、この点は間違いがない」青木愛之助の好奇心は、愈々高まった。品川は一体全体、何の必要があって、八月二十三日を、かくも重大に考えているのであろう。