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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
神経過敏な論説記者は、已にそれを憂える論調を示し、世論は漸次高まりつつあった。商工会議所が動き始めた。雑談的にではあったが、ある日の閣議で、このことが、閣僚達の熱心な話題となった。
白蝙蝠の紋章は、今やブルジョアの恐怖と憎悪の象徴であった。又、一見有利の立場に見える労働者も、白蝙蝠団の真意を推し兼ねて、一種空恐ろしい感じを抱かないではいられなかった。何と云っても、相手は泥棒人殺しの団体なのだ。その暴力を借りて争議の成功をおさめたとあっては、労働階級の名折れだという、正義派も現われて来た。学者論客は、筆を揃えて、悪虐白蝙蝠団の全滅を見るまでは、全国の労働者よ、断じて軽挙妄動すべからずと忠告した。
この社会の攪乱者、殺人鬼の団体を、何故放任して置くのか。政治家は睡っているのか。警察は何をしているのだ。と、結局非難攻撃の的は警察だ。中にも、白蝙蝠の本拠東京の警視庁だ。
ところが、何と途方もないことには、その怪賊退治の責任者、当の警視庁の最高指揮者は、いつの間にか真赤な偽物に、しかも誰にも見分けることの出来ない、双児の様な怪賊の一員と変っていた。つまり白蝙蝠団は、彼等にとって唯一の大敵である警視庁を、早くも占領してしまったのだ。