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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
今度は令嬢の番だ。彼女は乞食のボロを身につけ、髪をモジャモジャにして鏡を見た。
「アラ、そんな美しい乞食ってございませんわ。お顔にこの眉墨を薄く塗って上げましょうか。そうすれば、もう本物ですわ。誰が見たって華族様の御令嬢だなんて思いませんわ」
乞食は図に乗ってそんなことまで云い出したが、美禰子さんは却って面白がって女学校の仮装会のことなど思出しながら、乞食の云うがままに、顔一面眉墨を塗らせさえした。
二人はすっかり扮装を終って、肩を並べて鏡の前に立った。
「どう見たって、分らないわね。私がお前で、お前が私だって云うことは」
「マア、勿体ない。私はもう死んでも本望でございますわ。一度でも大臣様のお嬢様になれたかと思うと」
「お前、そんなに嬉しいかえ」
令嬢になった乞食よりも、乞食になった美禰子さんの方が却って嬉しそうだ。彼女は暫く鏡を見つめていたが、何を思ったか、クスクス笑い出して、
「お前、もっとおすまししてね、あちらの、書生や小間使なんかのいる部屋をね、見廻って来てごらん。そして、若し少しも疑われないで帰ってお出でだったら、そうね、何か御褒美上げてもいいわ」