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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

彼は悪人原が捕縛されるのを目にしながらも、何だかまだ現実の出来事と信じ切れない、不思議な夢心地で、当然心配しなければならぬ令嬢美禰子さんのことさえ思い浮ばぬ程であった。

「あり得べからざることです。この恐ろしさは個人的な恐怖ではありません。人類の恐怖です。世界の恐怖です」

明智が語り続けるのを、伯爵がさえぎって云った。

「信じ得ない。それは神の許さぬことだ。奴等も君と同じ様な一種の変装術を用いているのではないか」

「決して。彼等は真から容貌が変っているのです。例えば青木夫妻の如き人間が、どうして私の変装術を真似ることが出来ましょう。私は少くも十年間の絶え間なき研究と練習を積んで、やっと随意に顔の皺まで変える術を会得したのです。素人の彼等に出来ることではないのです。彼等のは私の様に変通自在ではありません。決定的のものです。一度容貌を変えたなら、そのまま永久に続くのです」

「夢だ。私も君も夢を見ているのだ」

「イヤ、夢ではありません。私は彼等の製造過程をある程度まで説明することが出来ます。それよりも一度彼等の工場を御目にかけ度いと存じます。この様な比喩を申上げるのは失礼かも知れませんが、閣下は多分寛政以前に飛行機を製作した岡山の表具師幸吉のことを御聞及びでございましょう。