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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

愛之助はそこで所定の金額を支払った。

さて、カフェから自動車で二十分も走ると、もう目的の場所についた。案外にもそれは、麹町区のとあるひっそりとした住宅街だ。二丁も手前で車を降りて、人通りのない淋しい町を歩いた。

「ここですよ」

紳士が指さすのを見ると、小さな門構えの中流住宅で、貸家の上りで生活しているといった構えだ。門から玄関まで一間あるかなし、家は古風な平家建である。

ポン引紳士は、その門の前に立ってキョロキョロと左右を見廻し、人通りがないと見定めると、「サア早く」と愛之助を押す様にして玄関に這入った。

「入らっしゃいまし」

敷台に三つ指ついて出迎えたのは、主婦であろう、四十がらみの品のよい丸髷婦人だ。変なことに、その婦人が重箱みたいな白木の箱を持っていて、青木が敷台に上ると、手早く彼の下駄をその箱に入れ、それを片手に抱えて先に立つ。

それから、二間ばかり通り過ぎると、茶の間らしい部屋に出た。主婦は黙ってそこの押入れの襖を開く。ハテナ、押入れの中に秘密の部屋でもあるのかしらと思って見ると、そうではない、やっぱり普通の押入れで、行李などが入れてある。