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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

…………………彼等が、………………ウトウトと夢路をたどりかけた時、突如、板壁の裏に仕かけた例の低音電鈴が、水の底からの様に、ジジジ……と不気味に鳴り渡った。危険信号だ。

愛之助はギョッとして、いきなりピョコンと飛起きた。警官の襲来を受けた犯罪者の驚愕である。

「大変です。着物を持って……何も残さない様に……隠れるんです」

彼は邪慳に相手を揺り起した。

恋愛遊戯にかけては大胆にもせよ、物慣れぬ良家の女子は、こんな場合ひどく不様である。…………………………、…………………………、……………、…………………。狼狽の極脱いだ着物のありかが分らぬのだ。ふだんそんな姿を眺めたなら彼は余りの滑稽にふき出しもしたであろうし、又一方では、アペタイトをそそられもしたであろうが、だが今はそんな余裕もない。彼は手早く相手の衣服を掴み上げると、彼自身のと一緒に抱えて、相手の手を取り、引きずる様にして、例の隠し戸を開き、その奥の暗闇に逃げ込んだ。

中は天井もなく、蜘蛛の巣だらけの太い梁が斜に低く這っている。迚も立っては歩けない。それに床も、鋸目の立った貫板が打ちつけてあるばかりで、其上に鼠の糞とほこりがうず高くたまっている。