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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

愛妻の芳江は同伴することもあり、しないこともあった。

先ず最初は東京での出来事である。

大学以来の友達に(愛之助は東京大学を出たのだ)品川四郎という男があった。貧乏人の息子であったから、大学を出るとすぐ職を求め、ある通俗科学雑誌社へ這入ったが、いつの間にかその雑誌を自分のものにして、自分の計算で発行する様になっていた。相当利益も上るらしい。

彼も商売が商売だから、猟奇を好まぬではなかったが、どちらかと云えば正常な男で、青木の出鱈目な生活を非難していた。殊に猟奇倶楽部という様なものには反対で、そんな馬鹿馬鹿しいことをいくらやったって、退屈が治るものかと、軽蔑していた。彼は実際家であった。

彼の猟奇は実際談であって、青木とレストランで飯を食う時など、よく検べた最近の犯罪談などを話して聞かせた。

愛之助の方では、品川のその実際的な所を軽蔑した。犯罪実話なんて退屈だからよせと云った。そして彼の好きな、荒唐無稽な怪奇の夢を語るのであった。

つまり彼等はお互に軽蔑し合いながら、どこかしら合う所があって、変らぬ交りを続けていたのである。

ところが、ここに、そう云う性質の彼等の、どちらもが、非常に昂奮して、夢中になってしまう様な、怪事件が起った。