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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
「あっちへ聞えやしないか」
とソワソワ尋ねる。
品川の方でも青木が這入って来たのを見ると、何かしらギョッとした様子で唇を白くしたが、
「大丈夫。ガラス戸だし、外の電車や自動車の音がひどいから。……で、一体何だね」
と声を低くした。
「この十五日の夜、君はどこで寝たか記憶しているだろうね」
青木は妙なことを聞くのだ。
「十五日と云えば、先週の土曜日だね。どこで寝たって、どこで寝る筈がないじゃないか、東京にいれば家で寝るに極っている」
「確かだね。変な場所へ泊りやしまいね」
「確かとも。だが、どうしてそんなことを聞くのだい」
「じゃね、昨夜だ。昨夜君はどこにいた。十一時から十二時頃までの間さ」
「十一時には、自分の居間の蒲団の中にいたよ。それから今朝までずっと」
「まさか君が嘘を云っているのじゃあるまいね」と青木はまだ疑わしそうに「それじゃ聞くがね、君は麹町の三浦って云う家を知らないかね。そこの屋根裏の赤い部屋を」
「知らん。だが、君はそこであいつに逢ったとでも云うのかい」
品川四郎は思い切ってそれを云った。云ってしまって、真青になった。「あいつ」とは云うまでもなく、もう一人の品川四郎のことである。