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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
疑問の男をのせて来た自動車は、もう出発して、半丁も向うを走っている。
「ア、しまった」突然品川四郎が叫んだ。「オーイ、その自動車待て」
品川が駈け出すので、青木も理由は分らぬけれど、兎も角彼に習って、車を呼びながら走った。外の自動車で追っかけようにも、さい前彼等が乗って来たのは、とっくに出発して、問題の車のずっと前方に走って居た。
結局、十間も走るか走らぬに思いあきらめる外はなかった。
「どうしてあの車を追駈けたんだ」
小さく遠ざかって行く尾燈を目で追いながら、青木が尋ねた。
「運転手の顔を見てやろうと思ってさ」品川が答える。「あんなに一度も目を離さなかった男が、別人と変っているなんて、あり得ないことだ。ひょっとしたら、あの僕と同じ顔の男が、座席を入れ変って、今の車の運転手になりすまして逃げて行ったのではないかと思ったのだよ。……だが、まさかそんな活動写真みたいな真似もすまいね。別に僕達を恐れて逃げ出さなければならない理由はないのだからね」
で、結局この追跡は不得要領に終った。彼等が自動車を見違えたのか、又は彼の男が故意に偽瞞を行って彼等をまいてしまったのか、いずれとも断定し兼ねた。